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2022-09-036 min read

【アクセシビリティ】視覚を使わずにWindowsを操作する方法

目次

はじめに

NVDA(NonVisual Desktop Access)は誰でも無料で利用できる Windows 向けのスクリーンリーダーです。
NVDA はオープンソースソフトウェアであり、オーストラリアの非営利法人 NV Access を中心とするコミュニティが開発しています。

補足すると、オープンソースとはソフトウェアの元となるソースコードを公開して誰でも改良や利用ができるようにした仕組みのことです。
実はこのブログもオープンソースの技術を組み合わせて作られています。

NVDA を使うことで音声による読み上げが有効化され、視覚に頼らず PC を操作できるようになります。
WEB ページの閲覧や操作はもちろん、Excel や Word といったマイクロソフト社製品など多くのアプリケーションにも対応しています。

Windows にはもともと「ナレーター」というスクリーンリーダーが用意されていますが、NVDA の方が多機能で個人的に使いやすいと感じています。
僕は 2 年ほど NVDA を利用していますが既に手放せない存在となっています。

NVDA のインストール

下記のリンクから日本語版の公式ページを開きます。
その後、ダウンロードのところにある「NVDA 日本語版をダウンロード」をクリックします。

NVDA 日本語版 ダウンロードと説明

あとはダウンロードした実行ファイル(.exe)を開いて指示の通りにインストールを勧めます。

インストールやアップデート時には寄付をお願いする画面が表示されます。
寄付金は NVDA の日本語チームの運営や NVDA の拠点である非営利法人 NV Access への寄付に利用されるようです。

NVDA への寄付

NVDA による Windows の操作

NVDA が起動すると画面上の項目が読み上げされるようになります。

エクスプローラーやメモ帳などの Windows の画面項目は基本的にフォーカスの移動と矢印キーで操作できます。
フォーカスが変化した時は NVDA が自動的に要素を読み上げてくれます。

例えばメモ帳やワードパッドなどの基本的な Windows アプリケーションの場合は Alt キーを押すとメニューバーがフォーカスされます。
その後矢印キーでメニュー項目を選択して Enter キーで決定できます。

フォーカスの移動:

  • Tab キーで次の項目をフォーカスする
  • Tab キー + Shift キーで前の項目をフォーカスする
  • Alt キーでメニューにフォーカスする
  • 矢印キー(上下左右)で項目の選択を移動する
  • Enter キーで決定する
  • Esc キーでキャンセルする(メニューやダイアログを閉じるなどの操作)

文字の入力

NVDA の起動中はメモ帳などで文字を入力する際もテキストが読み上げされます。
Google 日本語入力などの日本語対応 IME を使用すると変換の際に漢字の説明も読み上げてくれるようになります。
日本語の同音異義語で迷いにくくなるので個人的におすすめです。

NVDA キーについて

NVDA にはショートカットのために NVDA キー という特殊なキーが用意されています。
デフォルトは「INSERT」キーが NVDA キー に設定されています。
このキーは設定画面から「変換」キーや「無変換」キーなどに変更可能です。

NVDA キーを使用したショートカット:

  • NVDA + N で NVDA の設定メニューが開きます
  • NVDA + Tab で現在選択している項目が読み上げられます
  • NVDA + C でクリップボードのテキストが読み上げられます
  • NVDA + T で現在開いているウィンドウのタイトルが読み上げられます
  • NVDA + F12 で現在時刻が読み上げられます(2 回押すと日付が読み上げられます)

読み上げの速度や声の高さなどを変更する

デフォルトの音声だと人によっては早すぎるまたは遅すぎると感じるでしょう。
聞きやすいと感じる声は人によって異なるので、音声の設定を調整して最も聞きやすい声に近づけることをおすすめします。

NVDA では音声の変更もショートカットで行えます:

  • NVDA + Ctrl + V で音声メニューが開きます
  • Tab キーを何回か押して「速さ」または「高さ」まで移動し、ます
  • 矢印キーの上下を押して好みの設定に変更します
  • Tab キーを何回か押して「OK」まで移動します
  • Enter キーを押して設定を確定します

WEB ページの読み上げ

NVDA は Chrome や Edge などの WEB ブラウザの内容も読み上げてくれます。

基本的には矢印キーの上下で項目を移動します。Tab キーを押すとリンクやボタンなどにフォーカスできます。

WEB ブラウザでの基本的な操作:

  • 矢印キーの上下で項目を移動します
  • Tab キーで次のフォーカス可能な項目に移動します
  • Tab キー + Shift キーで前のフォーカス可能な項目に移動します
  • Enter キーで現在選択しているリンクやボタンを実行します
  • Esc キーでキャンセルします(メニューやダイアログ等を閉じる)

NVDa にはブラウズモードとフォーカスモードという2つのモードがあり、NVDA + スペースキーで切り替えが可能です。
フォーカスモードは Windows の操作で使用されるもので、ブラウズモードは WEB ページや Excel などのより複雑なオブジェクトを操作するためのモードです。

WEB ページ上の入力フォームや検索ボックスなどの編集可能な項目を選択してスペースキーを押すとフォーカスモードに切り替わります。
文字を入力した後に Esc キーを押すとブラウズモードに戻ります。

入力可能な項目の場合:

  • 矢印キーの上下で項目まで移動します
  • スペースキーを押すと入力状態になります
  • 文字を入力します
  • Esc キーを押すと入力状態を終了します

また、NVDA には 1 文字ナビゲーションという便利な操作方法が用意されています。
1 文字ナビゲーションはブラウズモードで使える「h」キーや「d」キーなどのアルファベット 1 文字の単独キーです。

それぞれのキーを押す度に対応する特定の項目まで素早く移動できます。Shift キーと同時に押すと前の項目へ移動できます:

  • 「H」キーは見出し
  • 「T」キーはテーブル
  • 「L」キーはリスト
  • 「K」キーはリンク
  • 「F」キーはフォーム項目(ボタンやテキストボックスなど)
  • 「G」キーは画像
  • 「D」はランドマーク(ナビゲーション、メインのコンテンツ、フッターなど)

例えば H キーを押すと最初の見出しへ移動して見出しのテキストが読み上げられます。
もう 1 回 H キーを押すと次の見出しへ移動して見出しのテキストが読み上げられます。
H キー + Shift キーを押すと前の見出しへ移動して見出しのテキストが読み上げられます。

その他:

  • Ctrl + Home キーでページの一番上に移動します
  • Ctrl + End でページの一番下へ移動します
  • NVDA + Ctrl + F でページ内を検索して移動します(通常のページ内検索とは異なりスクリーンリーダー用のテキストも検索対象になります)
  • 1 ~ 6 の数字キーは見出しレベル 1 ~ 6 に対応しています。H キーでは全ての見出しを対象にしますがこちらは見出しの大きさ毎に選択可能です

NVDA を使用して Google 検索してみる

練習として NVDA を使用して Google 検索を操作してみましょう。
Google のユーザー補助機能によると、検索結果のタイトルは見出しレベル 3(H3 タグ)なので「3」キーで選択できます。

  1. NVDA が起動している状態でhttps://www.google.com にアクセスします
  2. 「E」キーを押します。すると検索ボックスが選択されます。
  3. スペースキーを押します。テキストが入力可能になるので検索キーワードを入力します。
  4. Enter キーを押します。すると検索結果ページへ移動します。
  5. 「3」キーを押すと各サイトのタイトルが選択されます(H キーでも選択できます)
  6. タイトルのリンクを選択した状態で Enter キーを押すとリンク先へ移動します

初めて見る WEB ページは戸惑うこともありますが、何度か矢印キーで移動するうちにページ全体の構造を把握できるようになります。
慣れるとサイト毎の最適な 1 文字ナビゲーションが分かるようになるので素早い操作が可能になります。

画像の中の文字を読む

NVDA には画像認識機能が用意されており、画像内のテキストを読むことができます。
デフォルトでは Windows 標準の文字認識が使われます。精度はそこそこですが活字ならほぼ読み取れます。

画像認識を利用する:

  • 矢印キーを押して画像項目まで移動する
  • NVDA + R を押すと画像認識が実行される
  • 矢印キーの上下で認識結果を移動できる
  • Esc キーを押すと認識結果を閉じる

おわりに

僕は NVDA を使用して 2 年ほどになります。
まだ少し見えていた頃は頑張って画面の文字を目で追いかけていましたが、NVDA を使い始めてからは文字の読み書きがだいぶ楽になりました。

個人的には PC を全てキーボードで操作できるようになるので、現在はプログラミングや記事の執筆に役立っています。
また、見出しの大切さやアクセシビリティについても見直す良いきっかけになりました。

今回は異常です。
ここまで読んでいただきありがとうございます!

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